窓を開けると濃霧であたりは真っ白。
朝霧は晴れというだけあって、すぐに青空にかわったけれど。
朝ごはんはお粥、鳥肝。食後にカフェオレ。
キコさんとマルちゃんが小学校へ行くのをめぐさんとベランダから見守る。二人とも何度も何度も振り返っては、こちらに手を振る。
サンドイッチを詰めたお弁当を持参して、仕事を依頼している方達のところへ見学に行った。
知的障害を持っている方達に、木材を加工したり、色を塗ってもらったりしている。
こういった作業が好きなのだと、作業所の方がおっしゃっていたけど実際にこの目で見たかった。
そして、知的障害を持っている人間とそうでない人間の違いは一体なんであるか?自分自身の答えをきちんと持ちたかった。
今日一日を通して分かったことは、彼らの仕事には非常に沢山のコミュニケーションが溢れていることだった。
一つの木材を研磨し終える度に、私のもとに来て見せてくれる方がいた。覚えたての手話で「上手です」と伝えると、嬉しそうな顔をして次の工程を任されている方へ渡しにいく。
集中力が切れて手が止まる人もいれば一心不乱に筆を動かす人もいる。
しかし、どの方もひと息つくように色んな方達とのコミュニケーションを織り交ぜており、無機質なところが全く無い。それは効率とは全く比例しないのだれど、その光景は美しかった。
自分の問いかけに明確な答えが出せなかったことにほっとした。
理由はわからないけれど、彼らと私の間に明確な違いをもし感じるのであれば、このコミュニケーションは続く気がしなかったからだ。
帰り道の川沿いに咲いていたタンポポ。
冠毛をまとったたんぽぽを見ると「あなたはどこに行くんですか?」と尋ねたくなってしまう。
風に乗ってあっけらかんと飛んでいく冠毛を、自ら居心地の良い場所を壊してあてもなくさまよう私の姿に重ね合わせてしまう。
夕ごはんは鳥の味噌炒め、茹でたキャベツ、豆腐のお味噌汁。
穏やかな顔をして目まぐるしく変わっていく春達よ、どうか私もはるか彼方へ飛ばしておくれ。