久しぶりに福岡伸一さんと出会った。
モンベルというアウトドアブランドのカタログの中で、創業者の辰野勇さんとおしゃべりをされていた。
たしか、料理家である辰巳芳子さんと食べるという行為について対談されていたことがきっかけで、福岡さんに興味を持ったのだと思う。
その対談で福岡さんは食べることで命は刷新されるとおっしゃっていた。食べたものが自分の体に吸収され、分解され、排泄される。そうやって、自分の体に絶えず外の環境が入っては通り抜けて、また別の生物へ手渡されていくことで自然界のバランスが保たれている。
食べることは人間が自然の一部であることを気づくための時間なのだ、というようなことをおっしゃっていたような気がする。
世の中には沢山頭の良い人がいて、賢く生きていくためのヒントだって無数に散らばっている。
しかし、そのヒントのほとんどは、どうしたらお金や名誉を得られるかという類のものばかり。
お金や名誉も悪くないけれど、私は食べたり、服を着たり、人と接したりするという当たり前の営みがもっと豊かになるためのヒントが欲しい。
その点で、福岡さんは高名な生物学者ではあるけれど、その研ぎ澄まされた知性を、人間の日々の営みに活用出来る所まで解いて、易しく伝えて下さる。
なんでもないことを、とても難解なものにする人達の情報で溢れかえっている今、無条件で信頼や尊敬出来る人がいることの有り難さをしみじみと感じている。
今日はめぐさんの仕事が休み。
子供達はお母さんを独り占めしたいので、家の中はピリピリモード。
お母さんってなりたくてなれるもんじゃないってわかっているけど、あからさまに認められていない雰囲気を感じると少し悲しい。
でも、気持ちを切り替えて台所へ立つ。
夕ごはんは冷凍していたキチンカツを温め直したもの、ほうれん草の胡麻和え、五目煮、豆腐のお味噌汁。
めぐさんのお母さんから芽キャベツを沢山頂いた。
茹で上がった芽キャベツやほうれん草の鮮やかな緑に心は踊る。
台所で一人、春の足音に耳をすませよう。